オーストリア戦役-Deep breath at the wheel of Donau side-|サイフォンが放つ一人プレイ型タブレットウォーゲーム
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オーストリア戦役 コラム


2021/07/31
Progress Note

 ゲームデザイン及びシナリオを詰めていく上で重要となるのが、歴史や人物の解釈である。これは結果の幅のみならず、仮想要素を構築するにあたっても根幹をなすものと言える。今回はフランス軍の機動戦略とオーストリア軍の侵攻作戦に、史実を踏まえて一定の解釈を加えた。
 それと最後に手を加えたのが、防御戦闘から攻勢に移るAI構築である。戦力ユニットが少ないフランス軍をAIが担当するとして、インチキ処理なしである程度の強さを持たせる必要があった。その為のプログラムであり、これは仮想キャンペーンシナリオ「ドナウ戦役」を面白くする為の要素である。

オーストリア軍のバイエルン侵攻作戦

 この戦役のみならず、神聖ローマ帝国時代よりオーストリアはバイエルンへ度々侵攻している。理由は、神聖ローマ帝国の邦国バイエルンは皇帝を擁するオーストリアに反発を続けてきたし、そのバイエルンが反発できた背景にはフランスの支援があったからである。
 つまり、フランスと神聖ローマ帝国の代理戦争としての側面を持つのが、両国の争いである。ナポレオンの時代だと、市民革命の波及を防ぎたいというのが1805年のウルム戦役の始まりであり、その時に敗北したオーストリアがそこで失ったいくらかの領土を取り返そうとし、必然的に生じたのが1809年のオーストリア戦役である。

カール大公の解釈

 この人物がオーストリアの英雄とされている最もな理由は、アスペルン・エスリンクの戦いでナポレオンに初の黒星を付けたからである。この時は総攻撃を指揮し、フランス軍のランヌ元帥を戦死に追い込んだ。だからと言って猛将というイメージかと言うと、決してそうではない。彼の作戦の基本は、敵より優位な戦力で決戦に臨み、両翼包囲を狙うというシンプルなものである。それが叶わぬと判断した場合は後退し、戦力の温存を図るというものだ。
 この行動思考は、シナリオの設定において大きく採用しなければならない要素となる。まず部隊の配置においては両翼包囲が可能な布陣にする必要があり、退却する目安も設定する必要がある。また撤退して次の戦場へ進んだ場合は、そこで一定の回復が出来ていなければならない。仮想キャンペーン「ドナウ戦役」シナリオにおいて、前哨戦を全滅まで戦わない理由はこれに依る。

オーストリア軍の軍制改革

 結論から申し上げると、今回のオーストリア軍は全体的に強めと言っていいだろう。カール大公からすると未だ軍制改革の途上であり、フランス軍より弱い面が多いと判断していた様だが、本シリーズでの基本仕様としてユニットは兵数、兵科で基本レート、兵数よりレート増減、としている為、この範囲では相違点が出ないからである。
 よって約3万人単位で軍団としたオーストリア軍は、1軍団3ユニット編成となる。但し、後述するがユニット数が多いから強いとは限らないのが、ナポレオンシリーズの手番システムである。違いを作るとするならば混乱回復の回復値の加減であるが、こちらはユーザーの任意で変更が可能である。

フランス軍の解釈

 まず有名なイメージとして、ベルティエが優柔不断、ダヴーは決断の男、ナポレオンの指示の行き違いが発生。これらから、奇襲を受けたフランス軍は序盤で不利になりつつもダヴーの咄嗟の判断で窮地を脱し、ナポレオンがトドメを指したというものでだろう。
 しかしこれらを観察すると、ベルティエはバイアス無しであるがままの報告を行い、規定通りの行動を目指し、ダヴーは元帥として状況の変化に機敏に対応し、ナポレオンは両者の行動を予測して自身の行動を急いだと言える。その結果が、オーストリア軍の侵攻を妨げ、序盤で出鼻を挫かれた敵を退却に追い込んだと解釈できる。後はこれが失敗した場合の解釈である。

仮想としての可能性

 史実ルートでは、出鼻を挫かれたオーストリア軍は後退し、ウィーン近郊で決戦となる。史実で言うアスペルンエスリンクの戦いに近いシチュエーションである。仮想ルートは、防衛戦に失敗したフランス軍がウルムまで後退し、この地で決戦となる設定である。
 前者はオーストリアの残存兵に史実と変化が生じる為、その変化分をバイアスにセットアップを試みた。後者の設定は、ナポレオンの当初の指示に一定の解釈を加えた。その指示とは、エックミュールより10ヘクス程西の場所(アウグスブルク周辺)で集結せよというものである。つまりナポレオンは集結を急ぎ、そこから決戦という考えだったのである。これに対して、思ったより敵の侵攻が早いと気づいたダヴー元帥がハウゼンでの戦闘となり、その後エックミュールでの戦闘に移る。
 この過程で前進部隊を撃破され、両翼包囲が難しくなったオーストリア軍は撤退したが、逆の場合だとフランス軍が後退して部隊の集結を図るだろうと判断した。その場所としてアウグスブルクは戦場から近すぎたので、更に西10ヘクスの位置にあるウルムまで後退するという設定にした。不透明な状況においてカール大公が敵地で追撃に移るとは考え難く、再進撃の準備として休息の時間を取り、その間にフランス軍は若干の回復が可能であるとしている。

反省点など

 今回のタイトルで犯した最大のミスは、リサーチ不足から生じる制作のやり直し作業である。まずは「ランツフートの機動」時に「ハウゼン」という村が複数あって、マッピングを間違ってしまった事。次いでオーストリア軍の侵攻ルートを、若干間違って認識していた事である。この影響から、カール大公の作戦も間違って認識していた。
 カール大公が当初掲げたドナウ川の北岸から攻めようとする作戦は、オーストリア議会によって否認、却下された。そこで2個軍団を北から、4個軍団と2個予備軍団を南から侵攻させる作戦へと切り替えた。当初、この南側の部隊についてはウィーン方面からの機動と解釈していた。情報をここから切った為、いろいろと間違いが生じた。
 実はこれらの部隊の機動はウィーンからではなく、ベーメンのプラハ方面よりウィーン方面へ南下してバイエルンへ向かったのだった模様。つまり、当初のカール大公の作戦はフランス側の裏を突く等ではなく、初めから最短ルートで機動したいという考えが強かったのである。これは軍制改革の途上で、軍団単位の機動に不安があった事も一因と考えられる。こうした多くの反省を、以降のタイトル制作で生かしていきたい。

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2021/07/07
Designers Note

 ゲームデザインの中で、最も頻繁に変更が発生する過程が調整作業である。これは単にレートの変更であったり、マップの切り方の変更、登場ユニットの配置や登場時期の変更など、シナリオのデータに史実性の幅と仮想領域を設定し、遊びやすく、面白くする為の作業である。
 ナポレオンシリーズとして同一レート、同一システムで展開する本作では、シリーズものとしての作り易さと、それが壁となる調整のしづらさが同居している。前者は部隊のレート設定。これには割切りという概念を持てば楽に進む。後者はプロットした場合に生じる史実と反する結果、及び、その対策である。対策をしくじると背骨が歪み、シリーズとしてのバランスを崩す原因となる。

マップとユニットの配置

 シリーズを通して、初弾の「アウステルリッツの戦い」のマップサイズを基準として展開する事としている。どうしても誤差は生じるが、ヘクスあたり±15~20%程度の違いで通すこととした。ただ二作目「ワーテルロー戦役」より問題が生じた。エリアが広すぎて、1マップに収める事が難しいという問題である。こちらは、暫定的にマップを切り替える事で対処した。
 そして「ドイツポーランド戦役」では、イエナとアウエルシュタットを縦2マップを繋ぐ仕様で展開したが、AI処理の検索関係で時間を要した。この問題をクリアすべく、三世代目となるエディタ改修作業を同時に進める事とした。元となる処理方法がガザラより展開してきた8x8ヘクスでの処理になるので致し方ない事である。そしてこの規模で「ワグラムの戦い」を作ると当然マップサイズが横に伸びた。

先行配信版ワグラム

 先行配信版「ワグラムの戦い」シナリオでは、従来のタイトルより簡易的な処理を多く取り入れ、処理の軽量化を図り、とりあえず配信レベルに仕上げた。プレイ後の処理がいくらか簡素化しているのはこの為である。これはver1.0更新時、新エディタへの載せ替えと共に他のシリーズと合わせたいと考えている。
 なお、先行配信版としてであるが「ワグラムの戦い」シナリオを配信する事で、この規模を基準とした追加シナリオを検討する事となった。配信時に発表していた「エックミュールの戦い」と「アスペルン・エスリンクの戦い」などがこれにあたる。

エックミュールの戦い/ランツフートの機動

 配信時に発表していた「エックミュールの戦い」は、マップの領域が小さい事からチュートリアルシナリオ化、及び、部隊を師団規模に割いたバージョンを検討した。特に後者はマレンゴの試作で取り組んだ事もあり、そちらの実現性が高かった。だが、ここで問題が生じた。痛恨のマッピングミスをしていたのである。
 問題となったのはハウゼンという村の存在。恐らくは、バイエルンとりわけミュンヘン周辺に多い地名なのだろう。同名の地名が複数あった事と、またアーベンスベルクとアウグスブルクのスペルを読み間違っていた事も重なり、テストしていたバージョンを破棄して作り直す事となった。そのマップを見た結果、エックミュールの戦いにこだわるよりはハウゼンの戦いとエックミュールの戦いを含んだ、ランツフートの機動に始まる一連の半キャンペーンを再現しようとなった。

アスペルン・エスリンクの戦い

 こちらは現在まだ調整中のシナリオであるが、史実性にこだわると面白くするのが難しいという現象に陥っている。理由はナポレオンが負けた初の戦いであるからであり、負けた理由を知っていると負けなければならない戦いであり、負けないのであれば仮想要素を大きくする必要があるからだ。
 史実性を取るとフィールドも作戦の幅も狭くなる。フィールドと作戦の幅を広げると、これはアスペルン・エスリンクの戦いではなくなり、むしろ仮想ワグラムとなる。これらのことから、前述の「ランツフートの機動」シナリオと合わせたドナウキャンペーンとする案も検討している。

新エディタへの換装

 マップが広がった事により新エディタへの換装を予定している。これは「デミヤンスク包囲戦」での処理を元に、従来の全タイトルの換装を目指して設計されたものだ。ver2.0にて各タイトルまちまちであった作りを一度整理したものを再度、軽量処理化することを目的に制作したエディタとなる。
 現在までにAndroid版やiOS版などで64bitネイティブ化されてきたもののうちいくつかのタイトルが改修となり、それなりの時間を浪費する事となってきた。これらの問題から、統一エディタ化する事で改修期間を短くしロスをなくす事を目的としているので、今後の量産体制にも役立つ存在である。最初は「ドイツポーランド戦役」から換装を行い、次は「オーストリア戦役」を予定している。

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2020/10/02
Designers Note

 オーストリア戦役はドイツポーランド戦役と同時開発という事で、プログラム上の問題はドイツポーランド戦役の開発で対応する。オーストリア戦役では、会戦をどの様に表現するかのシナリオ作りに専念したい。またドイツポーランド戦役では、イエナ、アウエルシュタット、アイラウ、フリートラントと4つのシナリオを先行して制作。その中からイエナを仕上げて先行配信としたが、今回はワグラムに集中して制作し、他のシナリオは先行配信後の制作とする。
 正に今日の時点で変更したのは、イエナとアウエルシュタットの合体シナリオの制作である。この規模をみてワグラムの作り方が決まるからである。ワーテルローのイギリス軍はドイツ諸侯の兵が小刻みに存在し、それらを複数集めてユニット化したが、今回オーストリア軍は軍団制を採用しており、フランスと規模は同等である。なので、部隊同士を端折って合わせてというやり方はそぐわない。なので登場ユニット数は決定してくるし、それを収めるマップサイズも決まってくる。ほぼ倍の規模になる事が、容易に予想される。

ワグラムにおけるフランス軍

 フランス軍の設定はこれまで通りである。歩兵であれば1軍団2ユニットで割る。但しこれは2万人前後の軍団が基本なので、3万人の軍団であれば3ユニットとなる。更にダヴー第3軍団とマッセナ第4軍団には、3千人規模の騎兵隊がついているので、騎兵ユニットも追加する。歩兵の基本レートは3、7割以下に減少すると2、その半分だと1という計算である。騎兵については1千人あたりで1、3千人ならレート3であり防御戦ではレート1である。
 上記のレート設定は、ドイツポーランド戦役で確立した。元はアウステルリッツのレート設定からであるが、ワーテルローを経て、各国の軍団制度、師団制度、その混成編成などを一覧し、戦果などを考慮して決定した。よって歩兵であれば兵数7千人前後、騎兵であれば1500人前後の部隊が悩ましい設定となる。

ワグラムにおけるオーストリア軍

 アウステルリッツ時と異なり、今回のオーストリア軍は軍団で編制されており、フランス軍との釣り合いが良い。違いを出すとしたら騎兵隊の存在であるが、今回はユニット割・レート設定ともフランス軍と同様とする。問題となるは消耗している部隊の考え方である。前衛師団と第6軍団がこれに当たるが、とりあえずはフランス軍と同様に他の軍団と同じ設定とした。ちなみにフランス軍のベルナドット第9軍団は、構成するザクセン兵が同士撃ちをするなど混乱していたのでレート2、イタリア軍団は連携が難しいとしてユニット数1としてテストにかける。
 オーストリア軍の問題点としては、カール大公の行き届かなかった命令をどう扱うか、そして増援のヨハン大公の扱いである。前者はディベロップの過程で調整、後者はイベントで増援とする。これはフランスのマルモン第11軍団と機動中に交戦しており、その時に後退して遠回りになって戦場に遅れた事をどう考えるかである。一応、ギリギリ到着したマルモンを「時間軸+4」で登場、ヨハン大公を「イベント8‐8」(時間軸+ダイス)で登場としてみる。マルモンより早くは到着しないが、場合によっては同時に到着する事もあるという設定である。

ドナウ戦役(仮称)シナリオ

 ウイーン郊外で展開された、アスペルン・エスリンクの戦いとワグラムの戦いをキャンペーン化するシナリオを計画している。前者はナポレオンが初めて敗れた会戦であり、後者はその雪辱を晴らした会戦である。同じような展開は、ドイツポーランド戦役のポーランド戦役にて、アイラウ~フリートラントで予定しているので、その時のノウハウを生かしたい。
 ここでの課題は、仮想ワグラムの設計である。アスペルン・エスリンクの戦いでフランスが勝利した場合、引き分けた場合に、次の決戦ワグラムでどうなるかの設定である。この辺りはドイツポーランド戦役で展開する仮想とは、少し異なる展開を考えて、新鮮さを表現したいと思う。

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2020/09/17
Project Note

 ソロアプ第六弾は「オーストリア戦役‐Deep breath at the wheel of Donau side‐」というタイトル名にした。ナポレオンシリーズとしては4作目であり、当時最大規模の会戦となった「ワグラムの戦い」を扱う作品となる。このワグラムを従来のこまあぷ規格で扱うには、少々無理があると思われるので、同時開発するドイツポーランド戦役にて対策を練る予定である。
 という事で、今回の開発指針はドイツポーランド戦役と同時制作する事で、平行作業の実現と予定の期日を守り、縮めていく努力を怠らないという事を目指す事にする。これらは、働く上で極々あたり前の事であるが、近年は出来なくともペナルティを受けてこない教育制度や、責任という観念の違いから社会に出て足を引っ張り悩む子が増えている現実もあり、そのあたりの問題を乗り越えたいという思いからの目標設定である。

こまあぷ新規格への取り組み

 ドイツポーランド戦役の中で、一番大きな会戦はイエナ・アウエルシュタットの戦いである。個別に捉えれば、従来のこまあぷ規格とナポレオンシリーズの仕様で対応できるのだが、ひとつの海戦として捉えるとマップの規模が足りず、ユニット数も倍は必要となる。恐らくは東西と南北の違いはあれど、スケール的には近いだろうという事で、このふたつの会戦の為に新規格へ改修する事とする。
 ワーテルロー戦役で採用したふたつの戦場をシンクロ表示させるハイブリッドマップシステムは、イエナ・アウエルシュタットをこまあぷ規格で展開する為の仕様であった。但し、それほど離れていないイエナとアウエルシュタットでは、できればひとつのマップで再現したいという思いは常々持ち合わせていた。そして国際通信社の中黒靖氏が以前提唱していた40シリーズという、40ユニットで再現するゲーム作りを鑑みて、その規格に近いものを再現する事を目標においている。
 取り組み時の問題点として、現在の仕様ではヘクス処理かユニット処理、若しくはその両方の処理が重なる事で、動作が重くなるOSや媒体が生じている。この動作の軽減を行う事が新規格の課題である。目標は7インチサイズのアマゾンタブレットで動作できる事である。なお、COM動作のAIに関しても、騎兵予備の使い方と後退戦術について、取り組む事を課題としている。

スケジュール管理とその実践

 社会人として仕事をしていく上では、作業時間の短縮と質の向上は常に求められる能力である。これを拒む者はいずれ足手まといとなり、案山子役にもなれず悩む事となる。新人の時はこれで良かったのに、今回は違う事を求められて悩む、等がこの手の問題である。10日で出来たのなら次は7日でやる。7日でやれたのなら次は5日でやる。その短縮した時間を質の向上に充てる事で、費用を押さえて付加価値を上げられる。
 作業が遅れる理由としては、悩む・調べる時間で食らいこむ、出された指示を理解できずに作業をやり直す、進捗や問題を報告できずにチーム作業が停滞する、等である。これらは会議や指示のメモを取れない子に多く生じる現象なので、ますはメモを確実に取れるように訓練するしかない。という事で、今回の取り組みはここからのスタートとなる。

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