プレイレポート2
源平争乱の主人公でゲームのポイントを掴み取ろう
『騎虎の勢』木曽義仲でプレイ
北陸道を舞台に目の覚めるような勝利を重ねて平氏を追い落としたかと思うと、後白河と頼朝の策謀で進退窮まり、粟津の露と消え果てる……。木曾義仲の流れ星のような生涯は、平氏以上に盛者必衰の理を体現しており、涙を誘う。そんな義仲を、せめてゲームの中だけでも縦横無尽に活躍させたいと思うのは私だけではあるまい。
というわけで、『源平争乱』を木曾義仲でプレイしてみる。信濃南に兵を挙げた義仲は、史実通りに信濃北を制圧し、父・義賢の故地である上野へ。新田義重とは、これまた父の代からの対立関係なのだが、都合のよいことに義重は上野国内の制圧に失敗。
隙を突いて上野に入った義仲勢は難なく上野の武士団を傘下に収め、義重一党は歴史の表舞台から姿を消した。
新田義貞の不在で百五十年後くらいに後醍醐天皇が慌てるかもしれないが、私が気にすることでもあるまい。
【上野国を制圧した義仲に対し、頼朝は下野国に軍勢を集結させる】
頼朝に対しては一歩も退かず
『平家物語』によれば、いったん上野に入った義仲が信濃に戻ったのは、頼朝との衝突を回避するためである。上野に入った義仲勢に対してゲーム内の頼朝も強気で、上野を攻めるための軍勢を平然と下野に集結させてきた。史実の義仲はここで兵を引き、嫡男の義高を人質に出して和議を結んだのだが、そうした大人の対応は結果として三年ほどで無駄になった。頼朝相手の暫定和平には気が乗らない。
ならば最初が肝心である。いま頼朝が河内源氏の本流に収まっているのは、義仲の父・義賢を殺して惣領の座を手に入れた義朝の子であるからだ。本来ならば義賢の子たる義仲が上席のはず。源氏同士の戦に訴えてまで白黒着けたいというなら、受けて立とう。
頼朝の軍勢は千葉氏・上総氏を軸に三千七百人、こちらは信濃・上野の小豪族を束ねて二千五百ほど。兵の数こそ劣るものの、士気は高い。
攻めかかってきた頼朝勢は義仲本隊に攻撃を集中し、かなり危うい状況となったものの、辛くもしのぎきって、すべての敵を敗走に追い込んだ。
数的に劣勢かつ格下の相手に敗れた頼朝陣営の権威はみるみる失墜し、関東では義仲に降る者、平氏に寝返る者が続出した。いまや頼朝が押さえているのは下野周辺のみ。とはいえまだまだ頼朝は、多くの武士達が担ぎたがる豪華な神輿である(=基本の威信値が高い)。ここで手を緩めて再起を許しては、石橋山の二の舞だ。激戦を戦い抜いた軍勢をそのまま下野まで進め、速やかに頼朝の軍事基盤を解体する。これで後世の史家は「源 義仲が伊豆兵衛佐頼朝を破った戦い」と記述することになるだろう。合掌。
【数に優る頼朝勢を迎え撃つ。ここで引き下がったら、どのみち義仲に未来はない】
【動員した武士達を休ませる間に、上洛への布石として多田行綱を味方につける】
母方の親族・秩父党を従える
さて、頼朝と合流できなかった甲斐源氏・武田信義の勢力は平氏に敗れて雲散霧消し、同じく近江源氏・山本義経も駆逐された。平氏は山陰と九州で攻勢に出るほか、近江・美濃方面から東国の奪回を目指して動き始めた。
北陸でなく関東を固めつつある義仲は、平氏の攻勢軸を微妙にずらす形で東海道から攻め上ることにした。東海道の平氏支持勢力を切り崩して味方を増やすという大目標のほかに、武蔵国の秩父党をしっかり掌握したいという意図があってのことだ。
【平氏を支持する武士団の多い東海道に沿って京を目指すべく、軍勢催促】
【母方の親戚筋に当たる秩父党の棟梁、河越重頼を動員する。別に義仲勢力に好意を持っているわけではないのは残念だが】
畠山重忠や河越重頼、江戸重長、葛西清重といった秩父平氏の面々は頼朝の配下として広く知られているが、そもそも義仲の父・義賢は、彼らの祖父ないし大叔父である秩父重隆の婿だ。つまり義仲にとって彼らは母方の親戚筋である。また、あまり話題にならないことだが、義仲自身武蔵国の生まれだ。秩父党の面々は、頼朝の傘下に入りかけていたことなどさっさと忘れて、義仲を援けるのが筋であろう。
彼らを動員して駿河・相模で平氏と一戦交え、そのまま当時東国・西国の境界と意識されていた尾張まで進撃する。京に大軍を集結させている平氏とは、宇治・瀬田のあたりで激戦になると予想されるが、いまや東海・東山・北陸道の兵どもを糾合した義仲にとって、さほど無理な戦でもあるまい。
むしろ都に入ってのち、故・藤原信西入道に稀代の暗君呼ばわりされた後白河法皇のエキセントリックさと、どう渡り合うかが義仲の地位と名声を決めるだろう。「猛き者もつひには滅び」るかどうか、我が身の徳と天運のほどを、見究めようではないか。
【駿河・相模近辺で遅滞戦術を採る平氏の軍勢を、蹴散らしつつ前進】
【倶利伽羅峠の敗戦を経ていない平氏は、大軍を動員して京の守りを固めている】
源平争乱を全て見届けた男で嗜むマニアプレイ
『風向き待ち』多田行綱でプレイ
木曾義仲での正統派プレイと反対に、微妙な勢力での奮闘をお届けしよう。挑戦するのは多田行綱(ただゆきつな)。清和源氏頼光流の名門で、氏素性は頼朝よりも由緒正しいくらいなのだが、『平家物語』の中で「鹿ケ谷の陰謀」の密告者とされたこともあり(真偽不明)、あまり源氏っぽく見られていない人物だ。実際のところ、行綱は院および朝廷の意を体することで権威を保つ「京武者」の代表人物であり、平氏・義仲・義経と、京都で権力を握った勢力とはその都度提携するが、彼らが後白河法皇と仲違いするや敵に回って都から追い落とすという動き方を繰り返した。自分以外に独自の権威を持った武家を認めない頼朝が最終的な勝利者となったとき、本拠地の多田院を逐われたのは、ある意味必然だったとも言える。そんな多田行綱が多田行綱のままに武門の頂点を目指したらどうなるのか、試してみよう。
さて行綱は平氏と同盟している。平氏打倒が目標なのは事実だが、序盤に同盟を破棄しようものなら、その時点で敗北であろう。当面は平氏の手先として、河内源氏の謀叛人討伐に協力するほかない。
手近な相手といえば、頼朝・義仲の叔父に当たる、新宮十郎こと源 行家である。さっそく河内制圧のための軍勢を調える。正直に河内を目標地点に指定したせいか、新宮行家は逆に行綱を討つべく進撃してくるが、手勢はわずか二百九十人。鎧袖一触蹴散らした。
【直近の謀叛人、新宮十郎行家を討って名を挙げるべく、河内侵攻を目論む】
【こちらの動きを見て先制攻撃に出た新宮行家勢を返り討ちにする】
謀叛人討伐で名を挙げたい!
緒戦を勝利で飾ったのはよいものの、新宮行家一党は本国を平氏の大軍に蹂躙されて、瞬く間に消え去った。行綱の活躍機会はない。まあ、先ほどの戦勝で和泉と播磨に味方が出来ただけでも、よかったと思わなければ。
ほかに手が届く謀叛人といえば、近江北の山本冠者こと源 義経だ。
義経といっても頼朝の弟ではなく、武田や佐竹と同じく新羅三郎義光の子孫である。平氏に粘り強く抵抗していた山本義経の討伐を手伝うことで、少しでも名声を轟かせたいと思うのだが、我が軍勢が近江北に着く直前に、平氏は独力で義経の討伐を完了させる。またもや出番をもらえない行綱であった。
困った……。討伐できる謀叛人がいなくては、世に出る機会もない。考えあぐねた行綱はここで賭けに出る。後白河の意を受けて九州・四国で強大化しつつある反平氏勢力、緒方惟栄にケンカを売ったのである。
摂津に迫りつつある緒方勢と正面からぶつかれば、我が軍勢などひとたまりもない。多田勢は緒方を迎え撃つふりをしつつ、丹波に転進する。行綱を追う緒方勢の進路が京を指すや、平氏はこれを迎え撃つべく大軍勢を発向させた! 目論見どおりである。他人のふんどしで相撲を取ってこそ、多田行綱冥利に尽きるというものだ。
【和泉と播磨で味方につく武士団が出る。わずかな前進だが重要だ】
【続いて近江の山本冠者義経の討伐を企てるが、これは平氏に先を越される】
平氏への不満を誰が収穫するか?
平氏勢と緒方勢が備前あたりで一進一退を繰り返し、平氏が畿内近国で動員を繰り返すさなか、美濃・尾張付近で反平氏叛乱が起きた。平氏に助太刀すべく近江源氏の残党に呼びかけては無視されていた多田行綱は、直ちに馬首を廻らせて美濃へ向かい、土岐氏の祖である源 光長らを帰伏させる。行綱というキャラだけに、きっと平 清盛には「謀叛人どもを降してご覧に入れましょう」と大見得を切る一方で、美濃源氏には「平禅門相国への憤懣は吾主と同じよ」とかなんとか言って、懐柔したに違いない。
【緒方惟栄の軍勢を挑発して畿内におびき寄せ、平氏との衝突を策する】
そしてここで、驚くべきことが起きる。行綱が源 光長を降した(手を結んだ?)という報せを聞いて、畿内の平氏方武士達が続々と多田行綱に鞍替えしたのだ。元来の味方や美濃源氏と合わせて、多田行綱を支持する武士団は五十五まで膨らむ。度重なる動員で平氏に不満を募らせていたところに、美濃で優勢となったことが影響したのだろう。
【美濃で起こった反平氏叛乱を首尾よく鎮めると、畿内の武士団が続々と行綱への支持を表明した】
後白河法皇の敵たる平氏を討てる日も、これでぐっと近づいた気がするものの、まずは西で平氏と激闘を繰り広げる緒方惟栄か、東で木曾義仲を傘下に収めた源 頼朝を叩いて、さらに力と名声を蓄える必要がある。
【時機を見計らって平氏を討ち果たしたあとは、後白河法皇を存分に利用して政敵を追い込んでいくことも可能】
平氏の味方? 源氏の敵? いやいや、そんなことは初めから多田行綱に関係ない。後白河法皇の望みを達することで発言力を増していくのが、京武者たる多田行綱の生きる道だ。平氏のように公卿殿上人になれるかどうかはともかく、武門の元締めが畿内にいても別に問題はあるまい。多田行綱はいま確かに、武家の頂点を目指すための基盤を手に入れたのである。
【頼朝を伊豆に追い詰めて臣従させてみた。このゲーム世界で清和源氏の総帥は、頼光流の多田行綱である】