ディレクターズノート
戦ノ国コンセプト概要
ディレクター:石川淳一
■10時間で天下を統一
『戦ノ国』の基本コンセプトは単純明快です。
天下を統一するまでに10時間以内で終わること。
そして、天下を統一できなかった大名の生き様も肯定することです。
10時間以内というのは、前作『空母決戦』から続くSi-phonの基本的な方針に則っています。
すなわち「忙しい社会人が余暇の中で楽しめること」です。
シナリオ型であった『空母決戦』のように、さすがに1プレイ30分~1時間というわけにはいきませんが、指針として
「平日仕事から帰ってきてやっても2~3日、休日であれば1日で終わる」
という考え方の元に、ゲームをデザインしていきました。
また、1プレイ10時間とすることでシステムをシンプルにし、シミュレーションゲームにありがちな
「コマンドが複雑で何をしていいのかわからない」
「面倒で結局最後までプレイしなかった」
という状況を改善したいという思いもありました。
■生き様の全肯定=ゲームオーバーがないこと
従来の戦略級戦国ゲームは、一般的にその最終目標が「天下統一」に置かれていました。
だが実際のところ、すべての大名が天下を統一できるチャンスがあったわけでも、その意志があったわけでもありません。
しかしながら、天下を統一することがゲームの達成目標である以上、多少史実やバランスを曲げてでも、プレイヤーがどの大名家で始めても天下を統一できるように調整する必要がありました。
そこで出てきたのが
「戦国大名の様々な生き方を全肯定する」
すなわち
「どんな結末を迎えてもそれは1つの終わり方として認める=ゲームオーバーはない」
という考え方です。
新たな幕府の元で外様大名として終わろうが、忠義を尽くして大名家が滅亡しようが、それは戦国時代に実際にあった「一つの生き様」であり、『戦ノ国』では、それらを肯定しようと考えたのです。
しかしながら、天下統一以外もエンディングとして認めた場合に、達成感をどう表現するかが問題となりました。
天下を統一した場合には、ナンバーワンになったという目に見える達成感がありますが、その他の場合には、どうしてもそこが弱くなります。
そこで生み出されたのが年表システムです。
■年表システム
他の戦国ゲームでも、プレイヤーがやってきたことを年表風に振り返るゲームはいくつかありました。
しかし、『戦ノ国』が根本的に違うのは、ゲーム以後の歴史も生成されるということです。
薩摩や長州のように、戦国時代には天下に届かなかったが、幕末において歴史を転換させたような大名家があります。
また、真田幸村のように、滅亡したものの主家に最後まで忠節を尽くした姿が今でも人々の心に強い感動を与えているエピソードもあります。
そういった、「後世にどのような評判を残したのか?」までを年表で表示して、プレイヤーがやってきた結果がのちの歴史にどのように変化を与えたか、目で見ることができるようにしたのです。
年表は、さまざまなエピソードが、ゲーム中やゲーム終了時の状況を元に生成されます。
その各エピソードは200を超えており、それが組み合わさることで、無限ともいえる独自の年表を生成します。
また、年表データはテキストファイルで保存され、自分の歴史を振り返ったり、blogなどに貼って「年表自慢」しやすいようになっています。
■内政の簡素化
『戦ノ国』では、内政的なコマンドは意図的に簡素化しています。
それは、このゲームが(合戦も含めた)外交的な行動を中心に据え、そこにプレイヤーの意識を集中させたいからです。
そのため、一般に「内政」と呼ばれる、国内を整備する行動は、重点項目にポイントを割り振るだけで、あとは自動的に全領国に対して行われます。
また、領国が増えていくと、同じポイントの割り振りであっても、効果が低下していきます。
これは直轄領が増えすぎることで、目が届かなくなることを表現しています。
そのため、プレイヤーは意識的に自分の領土を譜代や臣従大名に与えることになっていきます。