ディベロッパーズノート
戦ノ国デザイン詳細
ディレクター:石川淳一
■内政の簡素化
『戦ノ国』では、内政的なコマンドは意図的に簡素化しています。
それは、このゲームが(合戦も含めた)外交的な行動を中心に据え、そこにプレイヤーの意識を集中させたいからです。
そのため、一般に「内政」と呼ばれる、国内を整備する行動は、重点項目にポイントを割り振るだけで、あとは自動的に全領国に対して行われます。
また、領国が増えていくと、同じポイントの割り振りであっても、効果が低下していきます。
これは直轄領が増えすぎることで、目が届かなくなることを表現しています。
そのため、プレイヤーは意識的に自分の領土を譜代や臣従大名に与えることになっていきます。
■外交と従属関係
戦国時代は、合戦にかなりの制約がかかっていました。
特に兵農分離が進む以前は、農繁期の戦闘行動は非常に困難だし、兵の戦死はそのまま国力の低下に繋がります。
そうなると、すべての領国を合戦的な手段のみで支配していく形はあまり現実的ではありません。
そこで、『戦ノ国』では、最終勝利者になるにはそこまで多くの直轄領を必要としないようにルールを定めました。
最大勢力にさえなってしまえば、あとはどちらかというと「敵対しない勢力」を作る方が重要なのです。
さまざまな制約のある合戦のみで強引に押し進めていくよりも、同盟や臣従といった関係を作って、効率よく支配していった方が、天下をとる近道です。
また、強大になった他家に「かなわない!」と思ったら、さっさと臣従大名として使えるのも一つの道です。
徳川家康のように、いつかチャンスが回ってくるかもしれませんから。
■俸禄と兵
『戦ノ国』では、戦国ゲームでは一般的な、兵の募集のようなコマンドはありません。
武将の俸禄に応じて自動的に割り振られます。これは、俸禄が「国の規模ほどではない領地を与えられたもの」という概念であり、領地に応じて兵を動員しているという表現だからです。
ですから合戦で特定の武将の兵力が減っても、合戦が終わったら、また俸禄の比率に沿って各武将が平均的に回復しやすいようになっています。
また、国力を超える俸禄を与えたり、何度も戦闘を行って兵の戦死者が多い場合には、十分な兵が分配されないこともあります。
同じように、兵農分離の効果もコマンドや値を表に出さずに、国の石高と商業値や鉱山値との比率である程度自動計算するようにしました。
史実ではそこまで単純なものではないのですが、あくまでもプレイヤーに意識させない形で、簡易な方法で処理したのです。
ちなみに、兵農分離が進むと、農繁期での進軍コストや、戦闘時の士気がかなり変わってきます。
■国の統治と治安
『戦ノ国』では、マップが国単位のため、国内に残る小勢力や、複数の城といったものは表現していません。
しかしながら、史実では国の状態が安定せず、十分な対外行動がとれない場合もままありました。
そこで『戦ノ国』では、国内を完全に把握しているかどうかの状態を「治安」というパラメータで表現しました。
治安が低ければ、その国を十分に把握できていないということになり、国の収入が低下します。
また、治安が低い状態で敵に攻め込まれると、その国の中の反抗的な地侍達が敵に加わるという形で、敵の兵力が増えるようになっています。
治安を上げるためのコマンドが「統治」です。
このコマンドは、抽象化されていますが国内向けの軍事行動と考えてください。
それゆえに、「統治」に参加した武将はその月に移動や侵攻ができなくなるし、大きな国での「統治」行動は、一定数以上の戦力を動員しないと兵に損害が出ることもあります。
■合戦
合戦はゲーム進行のスピード感を出すためと、プレイヤーの立場があくまでも大名家当主という視点から、当主が参加していない戦闘はコンピュータと同じ自動処理とし、当主が参加している場合のみ合戦の指示をできるように設定しました。
戦闘は国単位で行われますが、接する国境の数だけ侵攻ルートを設定できます。
1国に攻め込めるのは10軍団までですが、1侵攻ルートで最前線に配置できるのは3武将までというルールになっています。
そのため、武将数が多い場合は、侵攻ルートが複数有った方が、武将数の利を活かすことができます。
ただし、防御側は城を核にして部隊を各侵攻ルートに再配置できるのに対して、攻撃側は別の攻撃ルートに武将と兵を割り振り直すことができませんので、防御側の方がより効率よく戦力を再分配することが可能です。
合戦の戦闘処理においては、戦死よりも士気の低下による敗走が中心になっています。
また、武将の調略や裏切りが戦況に応じて起こったり、特定の武将の敗走の影響で全体の士気が変化したりと、シンプルに合戦での情勢の変化を再現しています。