空母決戦1942‐CARRIER DUEL in the PACIFIC‐|サイフォン&コマンドマガジンが放つタブレットウォーゲーム
空母決戦1942‐CARRIER DUEL in the PACIFIC‐ こまあぷ‐kama app‐

空母決戦1942‐CARRIER DUEL in the PACIFIC‐コラムページ

2014/07/30
Progress Note

 エキスパートモードではAIジェラシーの拡張を試みた実験を行っている。拡張とは、戦力が変動した場合の動きを確認し、将来、拡大化されたゲームへ転用する準備てある。

戦力の配分ルーチンの調整

 空母決戦1942のAIがガザラの時と大きく違うのは、本拠地・前進基地の存在とスタックの概念である。ユニットごとに適切な行動を割り当てていたがガザラのルーチンから、ふたつの拠点へ戦力を配分し、その中から適切な戦力を編制しなければならない。
 ここまでは、通常モードの開発時に終わっていた。そこから進化するエキスパートモードでは、増援がある場合に、このルーチンが機能するかを調整した。特に戦略級のゲームを作る時は、戦力の増減が生じる事が多い為、その準備に取り掛かる事にした。

アメリカ軍の増援強化

 ガザラの場合は、強かったドイツ軍の難易度を上げる事でエキスパートとしたが、空母決戦1942では当初から日本軍が不利なので、更に米軍を強くするだけで難易度は向上する。しかしながら、それだけでは面白くならない為、増援の戦力量は適度に抑える事にした。

日本軍の増援強化

 難易度を上げるだけなら、アメリカ軍を強化し、日本軍を弱体化するだけで良い。しかし、それではゲームの面白みに欠けるという事で、敵の増援戦力以下の範囲で、日本軍も増援する事にした。それがラバウル航空隊への増援である。
 日本軍のプレイで、最もモチベーションが下がるのは「日本軍の慢心」イベントである。人と対戦する時は、イベント時に会話があるのでまだ良いものの、コンピュータとの対戦では、どうしてもモチベーションが下がってしまう。
 そこで両方を合わせて、慢心イベントが発生するとラバウル航空隊が増援を受ける、というイベント化を行った。これは、日本軍がミッドウェーで空母を失った時、多くの搭乗員が救助されており、五航戦の再建や南方の基地に配属されて、活躍した事から引っ張ったイベントである。こうして双方の増援を追加しつつ、難易度は上げる手法を取った。

2014/07/04
Developer Note

 サイフォンスピリッツは、元々独ソ戦用に考案していたものを「ガザラ」へ転用して作ったAIである。今般、このAIを「空母決戦1942」向けに大幅改修する事となった。

サイフォンスピリッツの改造AIジェラシー

 そもそも、この業界へ興味を持ち始めた理由は、某国内メーカーのヘックス戦ゲームの動きに満足していなかった点である。その最もたる理由は、後退戦術の実装がされてなく、ただ突っ込んでくるだけの敵に萎えた事が原因であった。
 確かに、攻撃・防衛・防御という3つの行動の中からすると、敵へ打撃力を行使する攻撃と、敵に攻撃をされないだけの戦力を集中させる防衛は、比較的AIの実装が楽である。防御の何が難しいかと言うと、敵の進路を予測し、攻撃を受けた後の事まで予測しなければないない点にある。ここまでは、前回のサイフォンスピリッツで実装できた。
 今回追加される大きな要素は、スタックと前進基地の概念である。これが何を意味するのかと言うと、主戦線と第二戦線とに部隊を振り分けて、戦力を適切に分散させるAIを組む事を意味する。今回は防御戦という概念がないものの、こうした新しい要素を加え、空母決戦1942用のAIシステムへ改修する事となった。将来、規模が拡がった時にも活きる要素なので、手を抜く事無く改修作業を行った。

日本軍(アメリカ軍AI)モード

 おそらく、日本人の8割程度はこのモードで遊ばれると思う。そこでアメリカ軍AIには、特に力を入れる事にした。アメリカ軍の難点は、ミッドウェイ基地の存在である。
 仮に日本軍に奪われた場合、奪還するのに真珠湾からだと1ターンで到達できるが、フィジーからだと2ターンかかる。分散したいところだが、空母の数が日本軍より少ないアメリカ軍としては、真珠湾に常駐させると苦しい展開となる。そこで、空母を分散して配置するロジックに力を入れた。ここでの苦労は、きっと後で報われると感じたからである。また慢心イベントに関しては、相手が人間である為、慢心イベント対策を取ってくる事も想定し、行動に変化が出るように調整した。

アメリカ軍(日本軍AI)モード

 マップの配置だけ考えると、日本軍のAIは楽だと考えられる。日本という本拠地より、トラックという前進基地の方が全ての攻略対象に近く、ここに集結させる事にデメリットは無いからである。
 しかしながら「日本軍の慢心」というルールがそれを許さない。最初の撃沈判定が出ると、その艦隊に所属する空母全てが撃沈してしまうからだ。つまり、トラックに6隻の空母が集結している場合に、アメリカ軍艦隊がやってきて戦闘して負けてしまうと、全隻撃沈で敗北するまのである。そうでなくとも、このイベントで一気に形勢が逆転してしまう事も多々あるだろう。
 ここでAIにもルールを組み込む事となるが、例えばこのルール対策で1隻のみで行動させ、慢心をわざと発生させる様な動きをした所で、ユーザーのプレイ感に結びつくだろうか。答えは否である。何故なら、日本軍は正規空母を単独で行動させていない為、コンピュータがこうした行動を取るとゲームの雰囲気が壊れるからである。
 結論から言うと、このゲームの日本軍は、空母を4隻集中させる戦術と、2隻づつなりとも分散させる戦術がある。集中させた場合、慢心イベントが発生する事なく序盤を乗り切ると勝利、イベントが発生すると苦しい展開になりがちだ。逆に分散させた場合、各個撃破される危険性はあるものの、終盤まで持ちこたえる展開が多い。もちろんイベント後は集中させて構わない。こうした行動を組み合わせて展開できるものに調整した。

2014/06/30
Designers Note

 空母決戦1942もゲームデザインは中黒靖氏である為、デザイナーズノートではアプリ化する上でのゲームデザインについて展開したい。主にアナログからデジタルへ移植する上でのノートである。

ルールの表現について

 中黒氏デザインの「空母決戦1942」は非常に良く出来ているものの、通常の「移動~攻撃」を繰り返すターン制とは異なる独自の手番型シークエンスを採用している。手番というシステムもそうであるが、戦闘のシステムに独自性があり、プレイすると問題は無いものの、フローに落とすと若干複雑に見えてしまう。具体的には以下の流れである。
  1.手番の決定(日本軍or米軍orイベントの決定)
  2.空母戦 (MustAttack)
  3.攻略戦‐空母攻撃 (MayAttack) → 2.が発生していない場合
  4.攻略戦‐基地攻撃 (MayAttack) → 2.3.が発生していない場合
  5.艦隊の移動 → 2.3.4.が発生していない場合
  (2.3.4.5.が発生するとその後1.へ戻る)
 プログラム上の処理はこの通りであるが、ユーザーへこのまま提供すると混乱してしまうだろうと判断した。多くの場合、実際にユーザーが最初にとる行動は移動であり、攻撃はその後で発生する。そこで、サイトでは次の様に表現した。
  1.手番の決定 (日本軍or米軍orイベントの決定)
  2.戦闘の発生 (空母戦or攻略戦)
  3.艦隊の移動 → 2..が発生していない場合
 ルール上、攻撃は 【空母戦】 【攻略戦】 (更に空母攻撃・基地攻撃)に分けられていたものを、表現としては 【戦闘の発生】 としてひと括りにし、戦闘の中で空母戦と攻略戦とに分ける事とした。一回手番では、ひとつしか戦闘処理は発生しない為、この方がユーザーに分かりやすいだろうという判断である。

勝利条件について

 勝利条件については、当初、基地数のみでの判定であった。ゲーム終了イベントが生じた時点で、基地数の多い方が勝ちとなる分かりやすい条件である。
 ただこの中で、米軍が1隻残った状態で日本軍空母を全滅させ、その後【伊号潜水艦】イベントが生じた場合、ゲーム終了まで手番を繰り返すという事態が発生したので、空母が全滅時に基地数判定を生じさせるという処理を加えてリリースした。この後、AIアップデートをうる上で、空母が全滅時にサドンデス勝利判定を加える事となる。(※ver1.1.0.0にて対応)

エンディングについて

 実はAIの何倍も悩んだのがエンディング(AIに関しては次回)である。当初、エンディングに幅を持たせる為に、オープニングでは第一次世界大戦後からのスタートとした。そこから20年かけて真珠湾の奇襲攻撃が仕込まれ、プレイ後のエンディングとした。
 ゲームでは大勝利と判定勝利とに分けられ、陸上基地を全部征圧すると大勝利、ゲーム終了イベントで判定勝利とした。ここで史実型勝利は、米軍の判定勝利に置き、日本がポツダム宣言を受諾したとした。そして大勝利はそれが早まって、アメリカがアジアの覇者となり、念願の中国大陸へ進出し、満州の争奪戦へ参加するとした。良い感じのファンタジーである。
 ところが日本で悩む。大勝利は良くて米豪分断に成功し、日米の停戦に至るという事に置いたものの、判定勝利は日本軍の勝利なのかという疑問から、様々な悩みが生じた。また、ゲームが動き出す前にエンディングを設定したのも、視点が定まらない要因となってしまった。
 これにサドンデス勝利(ver1.1.0.0予定)が加わり、エキスパートモード(ver1.3.0.0予定)が加わるに到り、現実的に拘らず、よくよく考えて作り直そうという事にした。今回の反省点のひとつである。

スタックの表現について

 既にお気づきの方も多いかと思われるが、今回スタックの表現を加える事にしたものの、座標の計算処理に苦労して、通常、Vassal等で使われる表現とは逆の表示をしている。下側に積んでいく表現である。下に積むと言うと紛らわしいが、一番上のユニット座標は変わらないまま、スタック分のユニットが下に敷かれて、その敷かれた分がグラフィック表示として上に伸びる。およそ、Vassalユーザーが抱く違和感はここから生じるだろう。
 こまあぷで採用している回転機能もあって、どうしてもVasaalタイプの表示だと、一番上のユニットの座標が変化していく為、プログラム工数が嵩んでしまい、現在の方法に落ち着かせた処理のひとつである。

マップとユニット

 ゲーム制作の上で、最も重要と言えるのがマップとユニットのデザインである。こまあぷでは一応支給されているものの、アプリに組み込む段階で、どうしてもアプリ用に作り変える必要がある。ここで若さがでてしまった。
 今回は前作の「ガザラ」のAI実装時に、こちらも同時進行させた為、パーツの制作を先行して行った。その為、組み込むと微妙な表現となる箇所が多発したのである。例のひとつにマップがあり、アナログ版では基地の名称をヘクス中に入れ込む事ができるが、アプリで陸上基地名をそうすると、ユニットが動かないので基地名が読めないという事態になった。  アナログからデジタルへ変換する時点でのミスである。しかもゲームに実装する頃は見慣れてしまい、その状態が悪い事に気付かない。だがそのままの状態にする事もできないので、急ぎ修正する事にした。(ver1.1.0.0)

2014/06/26
Project Note

 こまあぷ第二弾「空母決戦1942‐CARRIER DUEL in the PACIFIC‐」が登場した。ゲームデザイナーは「ガザラの戦い」と同様、中黒靖氏である。同氏が直前にデザインされた「太平洋戦史」からのスピンアウトゲームとなる。

空母決戦1942の開発路線の決定まで

 こまあぷ企画は2014年に入って形作られ、3月に入ってからまとまった企画である。1月に「ガザラの戦い」をヘックス戦エンジンに乗せて動かし始めた頃、ものになりそうという事で、第二弾は「空母戦」という事になった。
 大阪での協議を終え、長崎へ戻ってきたばかりの頃、「試練の太平洋1942」という仮称で届いたゲームが元となり、「空母決戦1942」となっていく。基となったゲームは「太平洋戦史」(国際通信社)であった。発売前から予約で売り切れ、重版されるものの、それも売り切れとなり、異例の記録を打ち立てた作品である。手番システムはガザラと同様ながら、ユニットをスタックさせて艦隊を編制する事や帰港や制圧など、空母戦に沿ったルールが設定されている。
 問題はこのゲームをどういう形で表に出すかである。巷では「艦これ」の影響で、艦船名で検索すると、とんでもない状況になっている現状だ。ミリタリーが盛り上がるのは構わないのだが、そうした路線に振った所で、シミュレーションが面白くなるかという問題は当然ある。そもそも「艦これ」は、シミュレーションではなくRPGだと認識している。だからこそ、多くのユーザーを取り込んだのだろう。チーム編成や育てる要素など、ゲームを構成している要素はRPGそのものである。
 とりあえずガザラの方向性を踏襲し、シミュレーションゲームファン向けに舵を取る事にした。そうしないと、シミュレーションとして失ってしまう要素が出てくる可能性を感じたからである。周りでも「艦これ」と口にする方々は多いものの、実際にシミュレーションユーザーではまっているユーザーは見かけないし、はまっているユーザーはやはりRPGよりのユーザーが多い。ただ、そこから入って興味をもった方が、シミュレーションに興味を持っていただく事に関しては一向にウェルカムなので、従来のシミュレーションの路線を踏襲する事にしたのである。