デザイナーズノート
デザイナーズノートとしては、製品コンポーネントの中に入っている解説書の冒頭でも語っているのだが、ここでは紙面の都合で削除した事も含めて語りたい。
(ディベロッパーズノートはこちら)
何故ソリティアなのか
それは対戦型ゲームのソロプレイとの差別化をつけたかったからである。
通常こうしたアナログゲームは、対戦する事を前提として設計されるだろう。そのシステムを一人で担当するのがソロプレイである。敵味方を一人で担当し、ゲームのシステムを習得したり、分析したりという対戦準備が目的なのだが、そのモチーフの世界へ入り、ストーリーを追うプレイスタイルの方もいる。
だがゲーム性を高める為にカードドリブンシステムなどが入ると、どうしてもソロプレイが困難になってくる。特に後者の場合はそうだろう。ならば、最初から一人プレイ前提のシステムでいいじゃないかという思いは、昔からあった。こうした思いから信玄上洛はスタートする。というより、スタートが決まったので、これまでの思いを実現させる事にした。
こんな中、対戦型ゲームには先駆者も多くいる事で、わざわざそうした場へ、後発のメーカーが対戦型システムで参入する意義は今更薄いという思いが、差別化を図る上で大きく後押しをしてくれた。
ユニットを切ってもらう為に
PCゲームでもありがちなのだが、アナログゲームでも買ったはいいがユニットを切らず、そのままコレクション化されている方も多いと思う。それで満足されている方も多い。理由は個々人それぞれであろうし、その事が駄目だとは言わない。
だが一つだけ言える事は、ユニットを切らないと遊んで貰えない、という事だ。
その為、障害となりそうな事を極力排除していった。マップを全国ではなく、京から関東までとしたのもそうだし、ユニットをカウンターシート1枚に収めたのもそうである。そして、ルールブックも4ページで収めた。収めたといっても無理に押し込んだのではなく、ちゃんと読みやすいフォントサイズと行間・字間はとっている。
シナリオ情報やチュートリアルは別冊にした。ゲーム中、頻繁に読み返す所と習得できれば読まなくて済む所を切り分けたのだ。とにかくユニットを切って配置して、そしてルールを覚えながらプレイするというスタイルを取った。
この思いは、かつてエポックの日本機動部隊や、ツクダのジャブローなどを買ってきて、その日にユニットを切ってプレイした記憶からである。何かわからないけど、買ってきて即プレイできるようにする仕掛けは、絶対条件として必要だと感じていた。
モチーフから購入したものの多くが、ルールを読んでいる間にプレイした気になって、ユニットを切らないまま終わるゲームを多く体験してきたからでもある。
思い入れを深める為に
コンポーネントの内容やシステムについては、ディベロッパーズノートのページで語るとして、ここではエリア割についての思いを少し語りたい。
PCゲーム戦ノ国では、およそ国ごとの割り方であった。全国を表現するには丁度良い数になるのだが、戦国に思いの強い方からすると、大きな違和感を持たれた方も多いだろう。その反省から、信玄上洛では考え方を変えた。
国という単位は排除して、およそ20~30万石くらい(いい加減と言われようがあえてこうした)というエリアに分け、思い入れのしやすいエリア名を入れる事にした。戦ノ国でも途中で行いたかったのであるが、一度組みあがったシステムからの変更が難しく断念した思いがあり、今回、この案を採用したのである。やはり感情移入という要素は、プレイのモチベーションを維持していく上で、かなり大きなウェイトを占める。
そうした思いがないと、ユニットも切ってもらえないし、プレイもしてもらえないだろう、という思いからの仕様である。
リサーチしてプロットした数値を機械的に組み込んだものも、史料として価値はあるのだろうが、ゲームとして大切なのはやる気を起こさせる見せかけである。今回は特にソリティアという事もあり、思い入れという点に注力した。
対戦型ソロプレイとの違い
冒頭で書いた様に、対戦型ゲームのソロプレイは敵味方を一人で担当する。
今回はソリティアゲームなので、担当する勢力への感情移入だけでプレイできるようにした。敵は機械的に動けば良い。信長は信長らしく、浅井・朝倉はそれらしく動いた中で、プレイヤの武田が自分らしく行動する世界を楽しめる事が、一番楽しいのではないかという思いからである。
キャンペーンシナリオやグランドキャンペーンシナリオをセットアップすると、自分なりの戦略を立てる事となる。解説書の中ではそうした思いを支援する形で、定石策、上策、下作、鬼畜策、などと例を挙げている。
定石策は史実に近い形での展開、これはルール上、史実にそった形で切り取りしているのでそうなってしまう。そこから、歴史のifはどうなるのかのパターンとして幾つか出している。もちろんそれ以外のパターンもあるだろう。鬼畜策では、そういう行動はとってはいけないと分かりつつも、人間、試してみたくなる行動はあるもの。一度はお試しあれ、という事で出した。
対戦型では難しいシチュエーションでも、ソリティアでやる事で、ああこういう可能性もあるんだな、とか、この可能性はどうだろう、という事が手軽に楽しめるのである。
その先にあるものとして、当事者の気持ちを感じ取る事もできるだろう。
例えばセットアップの段階で伊勢の織田信雄が1ユニット率いて伊賀へ攻めたとする。後年、実際に起こって信長からこっ酷く怒られる事件であるが、当時の信長の心境が伝わってくるものだ。「お前はバカか茶筅丸」などと。
対戦機能を残した理由
信玄上洛の元ゲームはブラインドサーチ型の対戦ゲームであった。それを改造してソリティア化してしまったのであるが、対戦型ゲーム時代の名残も端々に残っている。
例えば、戦力チャートとして使う表があるのだが、これは日本機動部隊で使っていた、空母の甲板チャートからヒントを得て使っていたものである。もとが空母戦ゲームであるのでブラインドサーチ型のゲームでは相性が良かったのだ。廃止したり復活したりで、最終的には残ったのだが、これを残す事で対戦できる機能も残そうとなった。信長側をプレイヤが担当すると、信長の成長スピードが早くなるかもしれない。1年のターンを4~6で迷っていたのも、この成長スピードに原因があった。
結果的に、対戦できる事がインストラクト時にも都合が良いのではないかという事になり、機能として残す事になった。歴史に興味がある方や、退役している元ゲーマーの方など身近におりましたら、是非、こうしたゲームが今でも遊びやすい形で残っている事をお伝えしていただきたい。そうした形で存在意義が導き出せるとしたら幸いである。
Si-phonを立ち上げた時も、そうしたシミュレーションゲームという趣味へ復帰してもらう事を願って、その間口商品となるべく製品を投入していきた。売るだけならバイヤーで良いし、その方が楽である。
だがユーザーに遊んでもらえる製品を出す事に、メーカーとしての意義があると思っていた。この思いは今も変わらない。
Si-phon通販/a-game shop などで取り扱っております。